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糖尿病学会との意見の相違

MyMedipro株式会社 CEO・鈴木吉彦医師が、日本糖尿病学会誌「編集者への手紙」欄において、
**『抗肥満治療薬の適応外使用に関する見解の変更を求む』**と題した意見論文を投稿し、同誌に受理されました。
これを受け、日本糖尿病学会理事会より、以下の通り公式な回答が示されました。

ゼップバウンド注射部位

糖尿病学会との見解の相違。

鈴木吉彦医師からの要望書の要点

1. 学会の厳格な対応への懸念

鈴木医師は、Wegovy(ウゴービ)やZepbound(ゼップバウンド)などの抗肥満薬を保険適用外で処方する医師に対し、学会が退会措置を検討していると聞いたことに強い懸念を表明しています。このような厳しい処分は、日本の医療制度が抱える根本的な問題を覆い隠すものだと指摘しています。

 

2. 日本の医療制度の構造的問題

少子高齢化による医療費の増大と国家財政への圧迫 民間病院の経営環境の悪化により、保険診療だけでは収益確保が困難 医師の労働環境の悪化とモチベーション低下 自由診療は、これらの問題に対する一つの解決策として機能している

 

3. 専門医の裁量権と患者利益の擁護

鈴木医師は、糖尿病専門医こそがセマグルチドやチルゼパチドの効能や副作用を熟知しており、患者個別の状況に基づいた最善の医療を提供できると主張。特に、チルゼパチドによる糖尿病発症阻止率が95%以上という高い予防効果を挙げ、これを活用しないことは学会の使命である「糖尿病予防」に反すると批判しています。

4. 医療格差への警鐘

現状のままでは、薬剤に詳しくない美容外科医や美容皮膚科医が利益を得る一方で、真に専門知識を持つ糖尿病専門医が減少し、結果として患者が適切な医療を受けられなくなるという逆説的な状況を懸念しています。

日本糖尿病学会からの回答の要点

1. 退会措置の否定

学会は、保険適用外で処方を行う学会員を退会させる措置を検討している事実はないと明確に否定しました。

 

2. 使用に関する現行方針

2型糖尿病で肥満症があり心血管・腎症リスクのある人:最適使用推進ガイドライン(OUG)にとらわれず、オゼンピック・マンジャロの使用が可能 糖尿病をもたない肥満症の人:ゼップバウンド・ウゴービの使用は推奨できない

3. 将来への展望

学会は、cardiometabolic risk(心血管代謝リスク)が高い軽度肥満の人への保険適用拡大やOUGの見直しについて、企業と連携して研究を進める必要性を認めています。 4. 美容目的使用への明確な反対 美容目的でのチルゼパチド、セマグルチドの使用は許容できないという立場を明確にし、特にオンラインのみの診療は副作用の発見ができないため「全く許容できるものではない」と強く批判しています。

この議論の深層的意味

この往復書簡は、日本の医療が直面する複数の構造的課題を浮き彫りにしています:

 

保険診療と自由診療の境界線:医療の公共性と市場原理のバランスをどう取るか 専門医の役割と責任:高度な専門知識を持つ医師の裁量権をどこまで認めるか 予防医療へのアクセス:効果的な予防手段があっても、保険適用外では利用できない人が出る問題 医療の質の担保:誰がどのような基準で医療を提供すべきか

 

この議論は、単なる薬剤の適応外使用の是非を超えて、日本の医療制度の在り方そのものを問い直す重要な契機となっています。

※本内容は、J-STAGEに掲載された下記論文の要旨をもとに構成しています。
出典:鈴木吉彦「抗肥満治療薬の適応外使用に関する見解の変更を求む」『糖尿病』第68巻 第4号 2025年、pp.130–131
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/68/4/68_130/_article/-char/ja/

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