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カナグルやフォシーガが肥満治療に適していない理由

近年、カナグルやフォシーガなどのSGLT2阻害薬が「痩せ薬」として注目される場面があり、

糖尿病ではない方が減量を目的として使用するケースも見受けられます。

しかし、SGLT2阻害薬は本来、糖尿病や心不全、慢性腎臓病などの明確な適応疾患を

持つ方に対して、医師の管理下で使用される医療用医薬品です。

体重が落ちる可能性があっても、それは副次的な効果であり、
「痩せ薬」として使うことは安全性の面からも推奨できません。

ここでは、SGLT2阻害薬の作用機序や使用にあたっての注意点について、

わかりやすく解説いたします。

SGLT2阻害薬とは?

SGLT2阻害薬は、腎臓の「SGLT2(ナトリウム-グルコース共輸送体2)」という

たんぱく質の働きを抑えることで、尿中にブドウ糖を排泄し、血糖値を下げる薬です。

糖尿病患者さんでは、1日あたり約400kcalのエネルギーを尿糖として排泄します。

血糖コントロールとともに、軽度の体重減少が見られることがあります。

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健康な方の使用における懸念点

SGLT2阻害薬は、インスリンを介さずに糖を排出させる仕組みのため、

正常な代謝状態の方が使用した場合、以下のようなリスクが考えられます。

脱水・電解質異常:水分と電解質の排泄により、めまい・動悸・倦怠感などの症状が出ることがあります。

筋肉量の減少:エネルギー不足を補おうと体が筋肉を分解し、基礎代謝が下がる可能性があります。

尿路・性器感染症:尿糖が増えることで、膀胱炎や膣カンジダ症などが起こりやすくなります。

ケトアシドーシスのリスク:特に「正常血糖ケトアシドーシス」は、診断が遅れる恐れがあり、注意が必要です。

SGLT2阻害薬で体重が思ったほど減らない理由

SGLT2阻害薬によって1日約400kcalの糖が排泄されるとされていますが、

体重の減少はそれに比例しないことが知られています。2023年の研究では、約90週間使用しても、

体重減少は平均で3kg前後でした。理論的な減少量の約3分の1程度です。

この理由として、身体がエネルギー不足に対して自然に代償反応を示し、

  • 食欲の増加

  • 筋肉量の減少による基礎代謝の低下

  • 代謝の省エネモードへの移行(恒常性維持機構) が挙げられています。

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